振り返りを科学する、経験代謝の考え方

「経験代謝」とは、日本キャリア開発協会(JCDA)で使われる言葉です。「経験から学ぶ『学びの構造』」と定義づけられています。私なりに「経験代謝」について考えてみたいと思います。
経験代謝とは?
新陳代謝(体内で古い細胞が新しい細胞に生まれ変わり、常に健康な状態で活動できること)から名づけられており、「経験代謝」は経験を振り返ることで、その経験から自分が感じたことや今まで感じてこなかった価値観を改めて知り、自分自身の「ありたい姿」に向かっていくサイクルを意味します。成功した経験も失敗した経験も、覚えている経験も思い出したくない経験も含めて、すべての経験が自分自身の現在を作り上げており、これからも「経験」を糧に成長し続けることを「学びの構造」と言っています。
ただし、このようなサイクルに至るのには、「振り返る(経験の再現)」というアクションが欠かせません。単に「できた・できない」の出来事を振り返るのではなく、その時、どう思い、どう感じたのか、そしてその経験にはどのような「意味」があるのかを内省(自ら振り返る)することで、経験に意味づけ(意味の出現)ができ、次のステップに進む(意味の実現)ことができます。

自分ですべてをできる人は問題ありませんが、悩んだり、つまづいたりしている方など、「振り返り」ができないでいる方には、「キャリアコンサルタント」などの支援者が必要になる場合があります。キャリアコンサルタントは、困っている方に方向性を指示する問題解決の支援者ではなく、内省(振り返り、みずから考える)の支援者なのです。
振り返りを科学する
「科学する」とは、通常①観察→②仮説→③検証→④考察というプロセスを経ていきます。これは、デイビッド・コルプの提唱する「経験学習サイクル(①経験→②観察→③概念化→④実験)」とも似ていますね。このように経験をただ出来事として終わらせるのでなく、経験→振り返り→意味の出現→意味の実現(次の経験)と回していくことが「学び(成長)」だと日本キャリア開発協会(JCDA)は言っています。
自ら振り返り「なぜ自分はそう思った(感じた)のだろうか?」と考えることで、そこに映った自分を客観視することで、その経験に投影されている「モノの見方、考え方」に気づきます。これを日本キャリア開発協会(JCDA)では「自己概念」と呼んでいます。

自分で気づいた「モノの見方、考え方」をもとに、意図的に経験することを「意味の実現」と呼んでいます。したがって、経験代謝サイクルにおいて「経験の再現」の「経験」が、「与えられた経験」なら、「意味の実現」の「経験」は、「創造した経験」です。
科学するプロセスに当てはめると、観察(経験の再現・内省・振り返り)→仮説(意味の出現・自己概念の認識)→検証(認識した自己概念をもとに新たに経験する)→考察(新たな経験の再現・内省・振り返り)となると思います。振り返ることで、なぜそのような考えに至ったのかを認識できるという意味では「再現性」が高く、なぜその行動(経験)に至ったのかを考えることで「因果関係」を知ることができます。これが「振り返りを科学する」と述べている所以です。

無駄な経験など一つもありません。振り返りを忘れずに!
自己概念が揺らぐとき
人が悩む理由は、今まで信じてきた自分の「モノの見方・考え方」に自信が持てなくなってきた(これを「自己概念の揺らぎ」と言っています)からだと日本キャリア開発協会(JCDA)は言っています。思い出したくもない経験も、なぜそう思うのか、見たくない自分と対峙して振り返ることで、この思い出したくもない経験から受け取った意味があることに気づきます。こうして思い出したくない経験から学ぶことで、成長が著しくなります。人生に無駄な経験はありません。
ただし、この「悩み」の振り返りには、痛みが伴います。今まで自分が生きていくうえで信じてきたよりどころ(モノの見方・考え方=自己概念)の変更を余儀なくさせる可能性があるからです。キャリアコンサルタントは、そうした時の伴走者として、振り返り→成長、の支援をします。「キャリアコンサルタント=転職や仕事の悩み相談に乗る人」ではなく、今までのすべての経験を通して人生を楽しく過ごしていく支援をする仕事だと思っています。



振り返りたくもない経験もありますが、時間をおいてでも振り返ることをお勧めします。それを乗り越えることで自分の成長の糧となります。




